2018/03/16発行 ジャピオン958号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第71回 アカデミー賞

多様性受け入れ顕著
歴史に残る授賞式

 3月8日朝、iPhoneに次々とメッセージが入ってきて、驚いた。

 「ハッピー国際女性デー!」「あなたと知り合えてよかった!」

 昨年までは、なかったことで、国連などの行事を通して国際女性デーを認知していた。

 今年、個人的に国際女性デーを祝おうという動きがあったのは、ひとえに「#MeToo」「Time’sUp」など、女性やマイノリティーをもっと支援する社会を作り出していこうという運動が盛り上がっているためだろう。

クライマックスに
「inclusion rider」

 3月4日、放送された映画界の最大の祭典、アカデミー賞授賞式も、女性とマイノリティーの「讃歌」にあふれていた。

 「ワンダーウーマン」「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」など興行収入が巨大だった、つまり、より多くの人が観た映画の姿がどこにもなく、マイナーな映画に賞が集中したため、授賞式の視聴率は過去最低となった。

 それでも、「多様性」を映画界が受け入れようと積極的にアピールしたとして、今年の授賞式は、歴史に残るだろう。

 まず、「シェイプ・オブ・ウォーター」は、サリー・ホーキンズが主演し、男優ではなく女優主演作が、13年ぶりに作品賞を得た。

 主演女優賞を得たフランセス・マクドーマンド(「スリー・ビルボード」主演)の受賞スピーチは、クライマックスとなった。彼女は、型通りの謝辞ではなく、突然「inclusion rider」について語り始めた。聞き慣れない言葉だが、彼女自身も授賞式の前の週に知ったという。

 それは、ハリウッドの大作の主演俳優が、製作者側に、他のキャストやカメラクルー、メーキャップに至るまで、さまざまな人種やLGBTなどを含むことを要求できるという契約条項だ。おそらく、授賞式会場にいたスターたちは、それが何であるか、想像がついたのだろう。大きな拍手に包まれた。

 さらに、マクドーマンドは、主演女優賞にノミネートされたメリル・ストリープなどを立たせて、こう言った。

 「メリル、もしあなたが(inclusionriderを)行使したら、誰もがやるようになるわよ」

 そして、ノミネート女優が団結のため、ハグし合うという脚本にない異例な場面が、中継された。筆者が放送を観ていたバーでは、拍手が湧き起こった。

 また、筆者が取材したセクハラ訴訟専門弁護士、クリストファー・ブレナン氏は、最近の変化についてこう指摘する。

 「プロデューサーのワインスタインがセクハラをしていたという記事が出た翌日から、セクハラ訴訟の世界は180度変わった。企業が、被害者の声をよく聞くようになり、対応も迅速化した」

表面化した火
消さない努力

 しかし、「#MeToo」による女性の支援、「inclusion rider」による雇用の多様化が、すぐに起きるという訳ではない。せっかく、アカデミー賞などで表面化したのだから、今後、その火が消えないようにしなければならない。物事は、そう大きくは動いていかないだろう。

 例えば、筆者は、アカデミー賞授賞式が過去最低の視聴率だった理由は、「ワンダーウーマン」などのヒット作が受賞対象にならなかっただけではないとみている。「#MeToo」「Time’s Up」などが前面に出ていたゴールデングローブ賞授賞式などから鑑みて、アカデミー賞授賞式が、女性やマイノリティーを讃えるようになるのを予想し、それを嫌気した保守的な市民が、視聴しなかったのではないだろうか。

 中西部や南西部の保守的な州では、映画は観ても、リベラル色が強いハリウッド映画界に対する嫌悪感は強い。「#MeToo」についても、女性が声を上げるべきではないと、女性が思っている。

 アカデミー賞授賞式の直後、早速こんなツイートも見た。

 「自分は、白人の脚本家だ。自分の将来はどうなるのだろうか。逆差別で、お先真っ暗になるかもしれない」

 「#MeToo」「Time’sUp」の運動は、息長く継続していかなくてはならない。

今年3月8日の国際女性デーには、ニューヨークの国連本部でもさまざまな関連行事が行われた

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

用語解説 国際女性デー

国連は1975年3月8日以来、「国際女性デー」と定め、女性への差別撤廃と地位向上を訴える日としている。1904年3月8日、ニューヨークで女性による女性の参政権を求めるデモが起こったことを起源としている。毎年この日には、国際連合事務総長が女性の十全かつ平等な社会参加の環境を整備するよう、加盟国に対し呼び掛ける。  今年も国連本部では数々の関連行事を実施。パネル討論では女優のリース・ウィザースプーンが映画界などで相次いで発覚したセクハラの根絶を訴えた。

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