2018/03/02発行 ジャピオン956号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第70回 銃規制の訴え

高校生が立ち上がる
銃規制を求めて行動

 「フロリダと同じことが、自分たちの高校や近所でも起きるかもしれない。それを待っているわけにはいかない。投票ができる年齢になってはいないが、声を上げ、行動をする時が来たと思った」

 ホイットニー・ボーエン(16)は、深刻な表情で語った。2月19日に首都ワシントンのホワイトハウス前で、地面に横たわる「ダイイン」を行い、高校生や活動家400人を集めたティーンズの一人だ。

 同月14日にフロリダ州パークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で起きた銃乱射事件で、17人が犠牲になった直後から、全米で高校生が立ち上がった。なぜなのか。出張中のワシントンで、ボーエンとその友人らに話を聞いた。

声を上げる高校生

 ボーエンらは、①銃購入の際の身元調査強化、②メンタルヘルス対策の強化などを求める。

 「キャンディーを買うように、3分で銃が買えるのは、おかしいです」と語るのはホリス・カトラー(17)。

 これまで大学や高校を舞台にした銃関連の事件は頻発している。が、なぜ今回政治家や活動家ではない、フツーの高校生が立ち上がったのか。きっかけは、同級生を失い、肉体的にも精神的にも傷付いたダグラス高校の生徒が、声を上げたことだ。

 「同級生が、政治家よりもずっと大人のような政治的な活動をしているのは、米国の政治システムがいかに崩壊しているかという証言だ。彼らは、子供を守ってはいない」と同高校のデヴィッド・ホッグ(16)は語った。ボーエンらは、CNNなどに出演して、大人を批判した彼の言葉に、インスパイアされた。

 「ヘイ、ヘイ、ノー・ガン!」

 2月21日、50人ほどのTシャツ姿の高校生が、米首都ワシントンの連邦議会議事堂に向かって、甲高い声で叫び、行進していた。同日、ダグラス高の生徒らは、フロリダ州知事や議員に規制を訴えるために、バスに乗って650キロ離れた州都タラハシーまで旅をした。ニューヨークやシカゴなど全米で、高校生がデモを同時多発的に繰り広げている。

高まる銃規制への機運

 高校生だけでなく、大人の間でも銃規制を求める機運は、今までになく高まっている。クイニピアック大学(コネティカット州)の調査によると、有権者の66%が銃規制の強化に賛成し、同調査が始まって以来最も高い比率だった。反対は31%だった。驚いたことに、銃所有者の50%が規制強化に賛成していることも明らかになった。

 また、トランプ大統領も、銃を買える年齢を現在の18歳から21歳に引き上げ、銃購入時の身元調査を厳しくするという考えを示している。一部の共和党議員は、これに賛成し、強硬派のスコット・フロリダ州知事でさえ、21歳以下で、精神障害がある者に銃を販売することを禁じる方針を示した。しかし、他の共和党議員は、沈黙を続けている。

NRAからの資金

 なぜなら、銃の強力なロビー団体、全米ライフル協会(NRA)の巨額の政治資金が、トランプ大統領始め、共和党議員に流れ、銃規制への道をこれまでも強力に阻んできたからだ。トランプ氏は、2016年の大統領選挙中、NRAから3000万ドル、つまり33億円も寄付を受けている。今回も、新たな銃規制法案には、連邦議会上下院で共和党が過半数を占め、NRAの強固なサポートの中、成立するかどうかは怪しい。

 一方で、ボーエンらは、安全性を理由に、通う高校名は教えてくれなかった。ホッグらダグラス高校で声を上げた高校生らが、報酬を受け取っている役者だという「フェイクニュース」を銃規制に反対する保守系メディアが、ソーシャルメディアで広げているためだ。フェイクニュースは、ホッグらが、リベラル系の団体が書いたシナリオに沿って、嘘の証言をするために全米を旅する役者だとしている。

 銃が、未だに簡単に購入できる状況は変わっていない。ボーエンらは、抗議運動をしていることで、逆にターゲットになるのを恐れている。「言論の自由」があるにもかかわらず、抗議行動も命懸けというのは、相手が「銃社会」だからだ。

ワシントンで「Teens for Gun Reform」を立ち上げたボーエン(中央)ら高校生

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

高校生の銃規制運動

14日にフロリダ州パークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で銃乱射により17人の生徒が犠牲になった。この事件発生を機に、全米の高校生らがSNSなどを使って呼び掛け、各地で銃規制強化を訴える集会が開かれている。  被害に遭ったダグラス高校の生徒らがフロリダ州都タラハシーで、軍仕様の銃の販売の禁止や銃購入者の審査厳格化を訴える抗議を行った。それ以外にもワシントンDCエリアの高校生もホワイトハウス前に集まるなど、「ネバー・アゲイン」を合言葉に同様の抗議がミネソタ、コロラド、イリノイ、オハイオの各州の都市でも行われている。

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