2018/01/19発行 ジャピオン950号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第67回 大統領の精神状態に懸念

トランプ氏の暴露本
指摘される不安定さ

 トランプ氏が大統領に就任してから、1年が経った。しかし、新年早々、トランプ氏の精神的安定性に対する懸念が、メディアや政界で高まっている。

 以前から報道はあったが、今回のきっかけは1月5日に発売されたジャーナリスト、マイケル・ウォルフ氏の著作「炎と怒り〜トランプのホワイトハウスの内幕(仮訳)」という暴露本だ。

 そこに描かれたトランプ氏の姿は、以下のようだ。夕食後、一人で鍵をかけられる寝室に閉じこもり、ハンバーガーを食べながら、3台のテレビで録画したニュースを次々と見る。食べ物と歯ブラシに毒を盛られるのを恐れているため、ファストフードを好む。ホワイトハウスから情報がリークするのを毛嫌いしているが、情報は、本人が電話をかけまくる友人から漏れている。集中力と政策理解力が極めて低いため、トランプ氏に執務を続けさせるのに、ホワイトハウスの側近は苦労している−。

「不安定」の指摘に
自分は「天才」と反論

 著者ウォルフ氏は、発売と同時にNBCに出演し、こう指摘した。

 「ホワイトハウススタッフはトランプを子供のように扱っている。人々のトランプ像の描写は、子供みたいだということだ。誰もが言うのは、トランプが刹那的な満足感を必要とするということ。それが彼の全てだ。この男はものを読まず、人の話も聞かない。彼はピンボールのように、ただむやみに撃ちまくっているだけだ」

 これに対し、トランプ氏は翌日、ツイッターで反論した。本を読まないことは以前から知られているため、暴露本を読んだのではなく、メディアからその内容を知ったのだろう。

 「実は、これまでの人生を通して、私が持つ二つの最上の資質は、精神的な安定性と、まあ言ってみれば、とても頭がいいということだ」

 「私は、『すごく』成功したビジネスマンからテレビの大スターになり、そして大統領になった(しかも初の出馬で)。これは、頭がいいだけでなく、天才だ。それも、非常に安定した天才だ!」

 暴露本ごときに対し、トランプ氏が子供のような反発をしたこと、さらに、「精神的安定性」を自ら保証するという国家首脳にはありえない行動をしたため、精神状態への懸念は、さらに定着してしまった。

「肥溜め」発言に
共和党員あきれ顔

 また、トランプ氏はこの直後、米国への移民が多いハイチやエルサルバドル、アフリカ諸国のことを「肥溜めのような国(シットホール・カントリーズ)」と呼んだ。ホワイトハウスで議員とのミーティング中の発言だが、国家首脳が使う単語ではない。また、外交上、絶対にあってはならない発言だ。

 ABCに出演した共和党の重鎮、リンジー・グレアム上院議員でさえ、あきれ顔でこう言った。

 「(トランプが)自分のことを天才だと自分で言わなかったら、他人は、彼のことをそうは言わないだろう」(出演者、大笑い)

 「あいつについては、何を言っても大丈夫だ。(過去に)私は、彼が排外主義者で、人種をネタに攻撃を繰り返す、宗教に偏見を持つ人物だと言った。もういい尽くして、ネタ切れだ」

 それでは果たして、トランプ氏は、大統領でいることができるのか。

議論が始まる
憲法修正25条

 メディアは一斉に、「合衆国憲法修正25条」について解説を始めた。「大統領としての責務と任務が果たせない」と判断され、副大統領と閣僚の過半数が同意した場合、大統領を罷免し、副大統領が大統領に昇格するという条項だ。大統領がこれに不服を申し立てた場合、大統領を辞めさせるには上下院の3分の2の支持が必要となる。

 しかし、今のところペンス副大統領と閣僚が憲法修正25条を行使しようとする可能性は低いとみられている。

 私たちにとって大切なことは、不安定なトランプ政権が右往左往するのに惑わされず、個人、ビジネス、コミュニティー、そして日本や各国が、世界全体のために、どういった行動をとったらいいのかという個々の考え方を忘れないことだろう。

写真はカナダの書店の店頭に並ぶ、マイケル・ウォルフ著の「Fire And Fury: Inside the Trump White House」。カナダでも10日に発売された

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

「Fire And Fury: Inside the Trump White House」

ノンフィクション作家のマイケル・ウォルフ氏による、2016年の大統領選関係者、ホワイトハウス関係者はじめ、スティーブ・バノン前首席戦略官・上級顧問などの政権関係者、計200人以上に取材してトランプ氏の人物像をまとめた著書。

トランプ氏の弁護士団は4日に、著者と出版社に対し、差し止めと宣伝の中止を求める書簡を送付。出版社側はこれを拒否し、予約が殺到していたことから前倒して5日に発売した。発売後1週間で発行部数が100万部を突破した。日本では早川書房が日本語版出版権を取得し、2月下旬の発売を予定している。

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