2018/01/01発行 ジャピオン948号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第66回 2017年を振り返る

トランプ変わらず
米社会は変わった

 2017年を振り返ると、一つのことが言える。

 「トランプ氏は大統領になっても、決してぶれることがなかった。その影響で、米社会は大きく変化してしまった」ということだ。

やめないつぶやき
やめない問題発言

 トランプ氏は17年1月、大統領に就任し、年末を迎えたわけだが、何が変わらなかったのか、リストアップしてみよう。

 まず、批判されていたにもかかわらず、嘘の発言が多いツイッターをやめなかった。世界最大の国家の首脳であるにもかかわらず、北朝鮮の金正恩最高指導者を「ロケットマン」と呼ぶなど問題発言もやめていない。共和党の重鎮勢力と真っ向から対立して政権を立ち上げ、その状態は変わっていない。大統領候補時代に主要メディアと全面戦争を始めたが、それは今も日々続いている。政権準備チームもホワイトハウスもスタッフの出入りが激しく、政治的指名ポストも空席が多いままだ。

 トランプ氏に変化の兆しがなかった点を五つあげたが、トランプ氏とは関係なく、米経済は順調に拡大を続けている。17年末のクリスマス商戦の総売上高は、約5%という大幅な伸びをみせて、リーマンショック以降最大となる見込みだ。明らかに人々の財布のひもが緩んでいる表れだが、逆に言えば、貧富の格差が広がっているのは間違いない。

 トランプ氏にとって、いくつかの「成果」も上がっている。まず、年末に成立した税制改革だ。

 大企業と富裕層優遇だと批判されたが、とにかく30年ぶりの改革を達成した。いつもは対立している共和党幹部が「大統領、リーダーシップに感謝します」と褒めたたえたのをみても、大変な偉業なのだろう。

 この他、シリアなどで展開する過激派組織「イスラム国(ISIS)」に空爆などの攻撃を続けた結果、ISISの勢力が弱まり、「トランプ戦争の勝利」(ニューヨーク・タイムズ)となった。

 オバマケアの改廃には成功していないが、米メディアによると細かい大統領令の積み重ねで、オバマケアの制度を骨抜きにすることに成功しているという。

メディアは批判
支持者から称賛

 忘れてはならないのは、主要メディアは、トランプ氏の成果を批判的に報じているが、トランプ支持者たちは、大喜びしているという点だ。リベラル派の市民が多いニューヨークに住んでいると、決して分からないが、これは重要な点だ。税制が自らに有利に働こうが働くまいが、トランプ支持者は、オバマ時代の政策を蛇蝎(がだつ)のように毛嫌いしている。それを覆し続けているトランプ氏は「歴代大統領の誰よりも働いて、素晴らしい偉業を連発している」(支持者)と、顔を輝かせているのだ。

 トランプ氏が「変わらなかった点」と「成果」を振り返ったが、この二つが、米社会の流れを大きく変えている。

性的加害者が一掃
社会に新たな変化

 反トランプ派が「トランプ氏を早く弾劾してほしい」と願っている一方、トランプ支持者は「この素晴らしい大統領の時代が、いつまでも続いてほしい」と思っている。その中間という有権者はほとんどいない。つまり、「分断」がこの一年でさらに進んだと言わざるを得ない。

 しかし、2018年は、また違ったベクトルの変化が起きると期待している。その引き金は、一連の「セクハラ・パワハラ告発」だ。勇気を振り絞り、自らを叱咤(しった)してスピークアウトしてくれた女性や男性のおかげで、映画、メディア、政治の世界の「性的加害者」たちが、一掃されつつある。こうした動きを受け、18年の中間選挙では、国政・地方政治などあらゆるレベルで、女性の立候補者が大幅に増加するとみられている。選挙の結果、「加害者」たちが落選することも予想される。

 こうして、整理して考えてみると、良い方向にも悪い方向にも、米国はいつも変化している。それに比べると、日本は「忖度(そんたく)」や「自粛」や「自己規制」が大きく働きすぎて、変化のチャンスがなかなか訪れてくれないと痛感している。

アメリカ経済は好調。写真はユニオンスクエアのホリデーマーケットのにぎわい。年末商戦の売上高は、大幅な伸びが予想されている

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

税制改革

大幅な法人税の減税を含む税制改革法案が上下院で採択され、12月22日、トランプ大統領が署名し成立した。

トランプ氏は、大統領選挙の公約として大規模な減税を掲げて当選しているが、今回はその公約が実現された形となった。

改革案の柱となる法人税の減税は、現行の35%から21%への引き下げられる。これにより、先進国の法人税の水準に並ぶことになる。また大幅な減税により、今後10年で連邦政府の歳入は約1兆5000億ドルの減収になると推測される。米国での大規模の減税はレーガン政権以来、約30年ぶりとなる。

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