2017/11/03発行 ジャピオン940号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第62回 ロシア疑惑捜査

トランプ氏の関与は?
ネット企業にも責任

 「歴史的な日だ」とメディアが報じた。

 2016年米大統領選中、ドナルド・トランプ候補(当時)陣営が、ロシア政府と共謀したとされる「ロシア疑惑」を捜査中のロバート・ムラー特別検察官が、初めて捜査の端緒を見せたからだ。

 10月30日、トランプ陣営の外交顧問だったジョージ・パパドプロス被告が昨年春、ヒラリー・クリントン民主党候補(当時)に不利な情報をめぐって、ロシア政府関係者と会談していたことが、司法省の訴状で明らかになった。トランプ陣営とロシア当局との接触に関わったことを正式に認める人物が、初めて明らかになったため、「歴史的」となったわけだ。

元選対本部長を起訴
捜査進展のきっかけに

 訴状によると、 パパドプロス被告は、トランプ陣営の外交顧問だった16年3月から4月、ロシア政府とつながる人物と接触した。また、クリントン候補に「泥を塗る」あるいは、「数千通のメール」について話していたという。

 同被告は今年1月、連邦捜査局(FBI)の事情聴取を受けた際、ロシア政府関係者と接触した時期をトランプ陣営に加わる前と、嘘をついた。このため7月末逮捕され、捜査妨害の罪を認め、その後訴状の内容が明らかになった。

 同時に、ムラー特別検察官は、トランプ陣営の元選対本部長だったポール・マナフォート被告も、 資金洗浄の共謀など罪状12件で起訴した。罪状は、大統領選とは直接関係ないが、今後の捜査のきっかけとなるのは間違いない。

 起訴の発表は30日午前9時過ぎ。トランプ大統領は午前10時25分にツイートした。

 「悪いね。この件は、マナフォートがトランプ陣営になる何年も前のことだ。しかし、なぜ根性がひねくれたヒラリーと民主党が焦点にならないんだ????」

 同10時28分に再度ツイート。

 「それに、何の共謀もない!」

 現職大統領が、捜査中の案件について、ここまでコメントするのは、普通ならあり得ないが、ホワイトハウスの中で、大統領を誰もコントロールできていないことが、はっきりと分かるツイートだ。

SNSの悪用許す
ロシアから広告収入

 午後6時までには、ロシア疑惑について、さらに新しい事実が報道された。フェイスブックによると、ロシア発のニュースが過去2年間に1億2600万人の人に届いたという。同時にグーグルは、ロシアのアカウントが、ユーチューブ上の18の異なるチャンネルに1000本以上のビデオを流していたと発表した。

 民主主義の根幹である選挙をめぐって、これだけのフェイクニュースや不正確な情報が、米有権者に対し、ロシアから発信されていたという事実だ。

 フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は以前、フェイクニュースが何百万回のシェアされた事実について、「クレイジーだ」「ごくわずかだ」とコメントしていた。

 しかし、世界12億人が使う巨大プラットフォームが、民主主義の根幹を揺るがす場として悪用され、1億人以上もの人に偽情報をばらまいていた事実は見過ごせない。ユーチューブを傘下にするグーグルは、ロシア発の広告収入を得ていたことも、報道で明らかになっている。

 米大統領選挙をめぐるロシア疑惑の一環として、両社の企業としての責任が問われ、今後の対策は、ユーザーとして見過ごせない。

 ロシア疑惑は、実際にロシア政府関係者と接触したとされる、あるいはその可能性があるトランプ陣営関係者が、当局の徹底的な調べを受けていることが、正式に分かった。今後は、トランプ候補自身が当時、それを指示したか、あるいは認識していたかどうかが、焦点となる。

 今回の訴状の公開で、捜査が進んでいることが明らかになった。果たして、現職大統領が黒幕だったのかどうか。さらに「歴史的」と言われる日が来るのかどうか、ムラー特別検察官の動きは、目が離せない。

ホワイトハウス前で行われたトランプ政権に対するデモで掲げられた看板。ロシア国旗に「トランプとのつながりを捜査せよ」の文字が書かれている

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

ロシア疑惑での起訴

トランプ陣営の元外交顧問ジョージ・パパドプロス被告と元選対会長ポール・マナフォート被告、同被告のビジネスパートナー、リチャード・ゲーツ被告が30日に起訴された。  パパドプロス被告は2016年3月から4月にかけてロシア関係者と接触し、クリントン候補に対する妨害について会談。今年1月にFBIの事情聴取で、ロシア関係者との接触はトランプ陣営に入る前であったと虚偽の証言としたとして起訴されたが、今年7月に逮捕され、10月にすでに罪状を認めている。

マナフォート被告、ゲーツ被告は、ヤヌコビッチ前ウクライナ大統領側から巨額の顧問料を受け取った他w、資金洗浄や米国への謀略など12の罪で起訴された。いずれも無罪を主張している。  ホワイトハウスのサラ・サンダース大統領報道官は、パパドプロス被告の役割は「非常に限定的」なものだと述べ、マナフォート被告らの罪状もトランプ選対とは関係がないと主張している。

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