2017/10/20発行 ジャピオン938号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第61回 北朝鮮問題

トランプのレッドライン
北朝鮮は世界の問題に

 ニューヨークで国連本部を取材しているメディアにとって、北朝鮮の核兵器開発・ミサイル問題は従来、近隣国である日本と韓国の記者だけが取材していた。北朝鮮の関係者や韓国の代表部大使を追い掛け回していたのは、両国のメディアだけだった。

 しかし、北朝鮮の弾道ミサイルが、北海道上空を通過し、太平洋上に到達した今、米市民・メディアにとって身近な問題として急浮上している。

北朝鮮のミサイル
市民は脅威と認識

 北朝鮮の大陸間弾道ミサイルが、アラスカを超えて、米大陸の東海岸にあるワシントンやニューヨークに到達する可能性があるというのは、米国防省内だけでなく、メディアを通して市民の共通のコンセンサスだ。

 9月下旬、ワシントンに出張の際、米下院議員でアジア太平洋小委員会委員長のテッド・ヨーホー氏(フロリダ州選出)を日本人記者団の一人として取材した。9月15日、北朝鮮が発射した弾道ミサイルが北海道上空を通過し、襟裳岬東約2200キロの太平洋上に落下し、ワシントンでも話題になっていた。

 同議員は、「あくまでも私の選挙区では」として、こう語った。

 「選挙区でテレフォン・タウンミーティングというのをやって、7万5000人の共和党員、民主党員、無党派層に電話をしました。その結果、現在最も憂慮すべきこととして、北朝鮮問題がナンバーワンになりました。国家安全保障問題は、テロなど過去も常にナンバーワンだったのですが、北朝鮮に特定してというのは、初めてでした。米国人は、この問題をとても気にしています」

さらなる挑発あれば
何をすべきか決める

 また、 米大統領に対して「緊急時の特権」として連邦議会が承認する軍事力行使権使用承認(AUMF)についても、こう踏み込んで答えた。

 「AUMFが議会に要求されれば、おそらく可決されるでしょう。現段階で、金正恩・北朝鮮最高指導者がやっていること以上に挑発的なことがあるとは思いたくないですが、万が一、北朝鮮が今よりもっと挑発的なことをすれば、私たちは何をするべきか、予想し、そして決めなくてはなりません。しかし、その前に日本、韓国、同盟国、そして私たちの軍隊を攻撃するという布告があるでしょう」

 ヨーホー議員の認識は、連邦議会全体での認識とみていいだろう。ワシントンの議員は、その覚悟をしているに違いない。

従来政権と違う
行動する現政権

 さらに、現在の大統領がトランプ氏という従来の政治家ではないということで、別の要素も加わるというのを、同議員は加えた。つまり、「レッドライン=軍事行使に移る限界」をどこに置くかという点についてだ。

 「金正恩が理解しなければならないのは、過去の政権では、レッドラインは、見えないインクで描かれていました。でも、現在の政権は、何かをなすべきだとあれば、行動する政権です」と語る。

 さらに、「例えば、シリアで4000〜5000人の市民が化学兵器で虐殺されたという証拠が上がった際、化学兵器使用禁止の条約があり、多くの国が署名していました。それにもかかわらず、どの国も国連も何もしなかった。だから、トランプ大統領がミサイル攻撃をしました」と続けた。

 同議員は、最終的には国際社会が経済制裁の重要性を理解するべきと強調した。これは、米国の従来通りのアプローチだ。しかし、日本や米国外では、トランプ大統領とその政権のスタンスも理解しておくべきだろう。

 11月5日には、トランプ大統領が日本を訪れることが決まった。これを書いている10月18日現在、日本に一時帰国中だが、北朝鮮問題をどうみるのかは、22日に投開票の総選挙の争点にさえなっていない。いや、争点としながらも、腫れ物に触るようで、政治家もなるべく語らないようにしている。

 ヨーホー議員は、わずか20分の訪問で、ワシントンの議員を代表するかのように話してくれた。比べて、日本の議員は「平和」に慣れ過ぎていないだろうか。

ワシントンで会見に応じるヨーホー議員(写真提供=日本記者クラブ)

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

北朝鮮の弾道ミサイル

今年に入り北朝鮮はミサイル15回発射している。9月15日に北朝鮮が発射した中距離弾道ミサイル(IRBM)「火星(ファソン)12」の飛距離は過去最長の3700キロで、襟裳岬の東約2200キロに落下した。

7月4日、28日に発射実験が行われたのが新型ミサイルの「火星14」だとされている。これは射程距離が5500キロ以上の大陸間弾道ミサイル(ICBM)で、想定される最大射程は9000〜1万キロだといわれ、米国西海岸やシカゴも射程内に入ると推測される。

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