2017/07/21発行 ジャピオン925号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第55回 女性蔑視

仏大統領夫人への発言
問題意識のなさが問題

 「(年の割に)いい体ですね」

 トランプ米大統領が、フランス訪問中、マクロン仏大統領のファーストレディー、ブリジット夫人にこうコメントしたのには、驚いた。実際には、「You’rein such a good shape.」と言ったのだが、翻訳を仕事にする友人に聞いてみると、「such」があるので「年の割に」というニュアンスがあるという。

両首脳会う場所で
夫人の容姿を指摘

 「マクロンとトランプがそれぞれ相手のファーストレディーに別れのあいさつをしたとき、トランプはブリジットをじろじろ見た」と、AFP通信記者アダム・プロウライトはツイートした。そして、両手でブリジットの体のラインをなぞるような仕草を見せて言った。

 「素晴らしいスタイルだ。肉体的に素晴らしい。美しい」

 この話をフェイスブックでシェアすると、さらに驚くことが起きた。日本の男性から「どこが悪いのか分からない」というコメントが来たのだ。

 これは、ダメである。プロウライト記者がツイートしたのは、二人の首脳が会った公式の場で、女性の容姿・肉体に対する発言が、問題だと判断したからだ。容姿だけが、女性の魅力や価値のように扱う侮辱であり、しかも「年の割に」というニュアンスがあれば、女性差別だ。

 トランプ大統領の発言は大問題だが、日本の男性の一部の反応には、懸念が高まってしまう。こうしたことが起きるのは、テレビを中心とした「女性蔑視」の文化が、大きく影響しているためだろう。

米国ではありえない
日本の女性蔑視文化

 日本に一時帰国し、テレビで情報番組やバラエティー番組を見ると、「女性蔑視」がまかり通っていて、米国であれば、すぐにツイッターで炎上し、スポンサーが手を引き、ディレクター、プロデューサーの首が飛ぶような内容にあふれている。

 数年前だがNHKでさえ、柿についての情報を生放送中、ベテランキャスター、有働由美子さんに対し、井ノ原快彦氏が「有働さんは、渋柿ですね」とコメントし、びっくりした。

 今年の春、帰国した際は、バラエティーで「50歳を超えた女優を当てる」クイズで、スタジオの若いタレントが写真の中から一人ずつ、名指しし、「当たった~」と胸をなで下ろしていた。

 女性の年齢だけが、ネタになるという女性差別である上に、芸歴などについての尊敬も無視している。

 東日本大震災の際も、募金集めとして、若い女性の乳房に両手で触り、一回1000円寄付するという番組をやった民放があった。

 さらに、最近は、サントリーのビールのCMが、全国の美人の映像に重ね、「コックゥ~ん!しちゃった…♡」などという字幕を付け、「性的」「差別的」との批判を浴び、公開を中止した。

 どれも、絶対にあってはならない。こうしたコンテンツを子供に見せれば、女性にこうした扱いをしてもいいと思ってしまうだろう。繰り返すが、米国であれば、テレビ局幹部が飛ばされ、代理店やCM製作会社にも影響が及ぶのは間違いない。

目を光らせるべき
トランプ氏の発言

 こういうことが日本で度々起きてしまうのは、製作している側が、男性が中心になっているからだろう。男性の目線で、面白おかしい、あるいは売れると思うネタが、女性の問題意識やチェックを無視して、通ってしまうに違いない。

 こうしたことがダメだというのを知らせるために、逆にトランプ大統領の発言にも、目を光らせて、積極的に報道しなければならない、と痛感する。

 「ここに美しいアイルランドの記者がいる。笑顔が素晴らしい。だから彼女はあなたのことをきっとよく書いてくれるはずだ」(アイルランドの首相と電話会談中に、同記者を側に呼んで発言)

 日本の職場でも起きていそうな場面である。首脳を罰する法律も規律もないのが、こんなに大変なことにつながると、誰が想像しただろうか。

トランプ大統領の到着から会見までの様子をライブ中継した、マクロン仏大統領のフェイスブックページ(www.facebook.com/EmmanuelMacron/)

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

トランプ氏の女性差別発言

トランプ大統領が訪問先のパリで、マクロン仏大統領と会う公式の場で、ブリジット夫人に対して「いい体だ」と発言したことに対して、欧米メディアは女性蔑視だと批判している。  トランプ氏は、6月にもMSNBCテレビの司会者のミカ・ブレジンスキーさんに対してツイッターで「知能指数が低い」「(整形の)シワ取りで出血している」などとツイートした。  かねてから女性差別発言が問題視されているトランプ氏に対して、先月全国で行われたプライドパレードでも多くの女性が同大統領を非難した。各時代ごとに、同性愛者差別および性差別の撤廃、同性婚の合法化などの主張を掲げてきた他、LGBTであることへの誇りを主張するパレードとして知られている。現在では全米大小の都市のみならず、シドニー、メルボルン、トロント、ベルリンなど世界各国で同様のパレードが行われている。

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