2017/07/07発行 ジャピオン923号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第54回 プライドパレード

差別の復活を不安視
政治的主張多い行進

 6月は、LGBTの権利を確認する「プライド月間」だった。しかし、25日に開かれたニューヨークとサンフランシスコのプライドパレードは、例年と少し異なっていた。

 昨年までの「プライドパレード」は、LGBTの権利平等に対する「賛歌」「お祝い」だった。しかし、今年は、トランプ政権が発足して初めてのパレード。LGBTを否定する共和党が政権を取り、さらに国内に分断を呼ぶ言動が多い大統領に、権利が脅かされ、差別が復活するのを不安視してか、政治的なメッセージのプラカードが目立った。

 「RISE and RESIST(立ち上がり、抵抗せよ)」

 「ファシズムは、LGBTにとって問題だ」

 「多様性と愛のために立ち上がろう」

 具体的に彼らが不安視するトランプ政権の動きを見てみよう。

 第1に、オバマ前大統領が保証したトランスジェンダーの学生の権利がすでに奪われた。オバマ氏は、トランスジェンダーの学生らが自ら認知する性別の手洗いを使うことを保証した。しかし、トランプ氏は今年2月、それを撤回した。

 第2に、2015年に連邦最高裁が判断を示した同性婚の合憲が、違憲とされる可能性も残されている。

 さらに、トランプ大統領は、人口の半分以上いる女性に対しても、セクハラや差別発言を繰り返している。女性やマイノリティーよりも、歴史的に常に差別されてきたLGBTの市民らが、不安になるのはもっともだ。

企業間にも広がる
従業員保護の動き

 不安は市民レベルだけではない。米アルファベット傘下のグーグルやマイクロソフト、CBSなど50社が6月26日、連邦高等裁判所に対し、職場での性差別を禁止する連邦法によって、同性愛者の従業員を保護するとの判断を示すように求めた。

 企業が、裁判所のお墨付きである連邦法を作って、同性愛者の従業員を守ろうという異例の動きだ。米企業では、幹部クラスにも同性愛者が少なくはない。アップルの最高経営責任者(CEO)、ティム・クック氏など、経営トップにもいる。しかし、同性愛者であることを理由に昇進が阻まれたり、カムアウトしたことによって顧客が離れたり、解雇されるという事態は、いまだに続いている。

 ロイター通信は、「これほど大規模なグループが、LGBT団体とオバマ氏が何年も取り組んできた職場での性差別についての議論を擁護する姿勢を示したのは初めて」と伝えた。

「異常」ツイート
議員たちも忠告

 しかし、市民や企業の必死の抵抗や防衛策の一方で、トランプ氏の「異常さ」はエスカレートしている。

 同氏は6月29日、ニュース専門局MSNBCの朝番組の女性アンカー、ミカ・バージンスキーさんのことをツイッターでこうののしった。
 「顔のしわ取り整形手術で、ひどい血を流していた」

 「IQが低い、頭がおかしいミカ」

 ツイートの背景は、彼女と同僚アンカーのジョー・スカーボロー氏が番組で「私の悪口を言ったと聞いた(もう番組を見るな)」(トランプ氏のツイート)ことだという。

 これには、ベン・サース上院議員(ネブラスカ州)が2時間以内に、こうツイート。

 「もうやめてください。尋常ではありません。大統領執務室の尊厳の品位にかかわります」

 他の上院議員やポール・ライアン下院議長も追随した。さらに、トランプ氏を支援し、ホワイトハウス内でもリベラル系メディアよりも優遇されているニューヨーク・ポスト紙でさえ、「トランプのツイート」と題する社説で、たった1行、こう苦言した。

 「やめてください、とにかくやめてください」

 ところが、トランプ氏はさらにエスカレートした。CNNに見立てた人物を、同氏がレスリングの場外で殴るというビデオをツイートしたからだ。同氏は、CNNなど主要メディアを「フェイクニュース」と呼び、全面戦争に突入している。

 こうした動きを見て、市民や企業、団体が自分たちの権利、いやこれまで当たり前であった状態を保護できるように対策を加速化させるのは間違いない。

先月25日にニューヨークで行われたプライドパレードでは、権利が脅かされる不安からか「RESIST」などと書かれたサインを持つ参加者が多かった

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

プライドパレード

ニューヨークで起きた警察の弾圧に反発した同性愛者らが起こした「ストーンウォール暴動」(1969年)の翌年、事件から1周年を記念して行われたデモ行進が現在のパレードの起源とされている。

各時代ごとに、同性愛者差別および性差別の撤廃、同性婚の合法化などの主張を掲げてきた他、LGBTであることへの誇りを主張するパレードとして知られている。現在では全米大小の都市のみならず、シドニー、メルボルン、トロント、ベルリンなど世界各国で同様のパレードが行われている。

バックナンバー

NYジャピオン 1分動画


利用規約に同意します
おすすめの今週末のイベント