2017/06/02発行 ジャピオン918号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第52回 トランプ氏の初外遊

二つの首脳会議出席
礼儀、作法では減点

 エマニュエル・マクロン仏大統領(39)は、就任してわずか2週間、トランプ米大統領(70)は、約4カ月だった。5月最後の週末に開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議と先進7カ国(G7)首脳会議に参加した大国トップの二人だが、マクロン氏の方がずっと堂々としていた。政治家と政治経験のない人物はこんなにも違うのかと思い知った。

握手警戒する仏大統領

 まず、握手は見ものだった。トランプ氏は、握手の際、相手の手を強く握り、男性としての優位性を誇示するため、自分の方にぐいっと引っ張ることで有名だ。礼儀としては失礼で、過去には、盟友であるマイク・ペンス副大統領などが、体のバランスを崩し、一歩前に出てしまったりする失態をテレビの前でさらした。さらに、ドイツのメルケル首相がワシントンで会談した際は、握手を拒んだ。マクロン氏は、このことを米紙ワシントン・ポストなどで知り、警戒していたという。彼が引っ張られれば、フランスの恥となる。

 まず、ブリュッセルで開かれたNATO加盟国首脳を、先に到着していたマクロン氏が出迎えた。彼は、首脳らの反対方向からまっすぐトランプ氏の方に歩き、トランプ氏も両手を軽く広げていた。しかし、マクロン氏は、突然方向を変え、もっとも強力な関係を築くべきドイツのメルケル首相にハグと両頬にキスをし、他の首脳二人と握手をし、それからトランプ氏に戻った。その間、トランプ氏は、広げた両手をぶらぶらさせ、仏頂面だった。

 2回目の会談の際も、マクロン氏は、トランプ氏がいつもするように、握手した腕を激しく振って対抗し、トランプ氏が手を離そうとしても握り続けた。二人の手は白くなり、二人とも歯を食いしばっているのが、映像を見るとよく分かる。それでも、マクロン氏は、フランスのトップであり、トランプ氏の野蛮な作法に屈しない姿勢を見せた。

 一方、モンテネグロのマルコビッチ首相は、握手の際、3回もぐいっと引き寄せられ、最後には左手を添えて、やっと握手を終わらせた。おそらく、マクロン氏のように準備をしていなかったのだろう。

内容は必要最低限

 さらに、トランプ氏はNATO首脳の記念撮影の際、同首相の後ろから手を使ってぐいと押しのけ、最前列に出て立ったことは、テレビで何度も報道された。撮影されていることも、お構いなしの無作法である。ドイツの有力誌シュピーゲルは「小学校の校庭やディスコの出入り口でありがちな場面だ」と揶揄した。

 このように、世界の超大国トップであるトランプ大統領は、初の外遊で、礼儀・作法において、かなりの減点だった。二つの首脳会議の中身はどうだろうか。

 トランプ氏は、G7について「極めて生産的な会合」「真に歴史的な週」「ホームラン」と述べた。しかし、トランプ氏は、オバマ前大統領が署名した気候変動問題に関する「パリ協定」を押し戻し、それ以外の部分でG7は合意にこぎつけ、ぎりぎり首脳宣言を発表した。

 地球温暖化は加速しており、将来の人類の死活問題になるのは必死だ。

「地球温暖化に今取り組まなかったら、自分の子供、そして孫、ひ孫に、今と同じ地球を残せるのだろうか」

 G7を伝えるテレビのコメンテーターが、緊張した面持ちで言った。

 NATO首脳会合でも、過去に合意されたGDP(国内総生産)比2パーセントの国防予算は必要最低限に過ぎず、不十分であり、「米国の納税者に対して公正ではない」と訴え、「アメリカ・ファースト」を全面的に打ち出した。

世界を良くする努力を

 二つの首脳会議が終わった週明け、欧州各国は、米国との協調を見直す姿勢を矢継ぎ早に示した。地球温暖化など世界が抱える問題を米国が共有できない限り、独立した思想や政策を確立しなければならない。これは、過去に筆者もここで書いた。市民レベルでも、トランプ政権下でも、どうやって世の中を良くできるのか、考えていかなくてはならない。

トランプ氏の気候問題についての政策に反対するアーティスト。昨年の共和党大会で

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

G7首脳宣言

今回のG7首脳宣言では、北朝鮮、東・南シナ海、サイバー攻撃の問題への対策、国際経済、貿易、移民・難民問題などへの取り組みに関して各国首脳が会議のコンセンサスを発表している。その中で、気候変動への取り組みに関しては、集団的なエネルギー安全保障の強化、原子力利用の最高水準の安全、核セキュリティー及び核不拡散の確保などが再確認された。ただし米国は気候変動及びパリ協定に関する政策の見直しプロセスのため、コンセンサスに参加する立場にないとしている。

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