2017/04/07発行 ジャピオン910号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第48回 トランプ政権最新動向

「三権分立」機能し
新人政治家に「逆風」

 「独裁者」「強権政治家」になるかと恐れられていたトランプ大統領だが、今のところ、「新人政治家」として、さまざまな「逆風」に見舞われている。それを浮き彫りにする出来事が、ワシントンでは毎週のように起きている。

 米国の三権分立の「チェック・アンド・バランス」システムが意外に機能しているのを、私たちは目の当たりにしている。

党利党則従わず
議員が独自判断

 3月23日、トランプ氏の公約の目玉である、オバマケア(オバマ前大統領政権の医療保険制度)の改廃法案(正式には「アメリカン・ヘルス・ケア・アクト(AHCA)」)について、連邦議会下院が採決を見送った。もちろん、与党共和党は、上下院ともに多数派を占めている。にもかかわらず、共和党内の票をまとめる目処が立たず、挫折。米メディアは、採決の予定時刻まで、同法案に反対する共和党議員の数を刻々と伝え、 緊張感が高まっていた。

 トランプ大統領も、オバマ前大統領とは異なり、共和党議員に電話をかけたり、側近を議員の集会に送るなど、かなりの時間を割いていた。

 しかし、「AHCAは、私が見た法案の中で、最悪のものだ。私の選挙区民のためにも、賛成するわけにはいかない」と、共和党のベテラン下院議員がテレビでコメント。党内の不協和音が根深いことを示した。

 オバマケアを廃止するという大統領の公約は、オバマケアを毛嫌いする共和党の大命題でもある。ところが、党利党則に単純に従うのではなく、新法案が、自分を当選させてくれた地元有権者の生活にどう影響するのか、議員が分析し、よくない結論が出れば、投票に反対票を打つ。与野党いずれにもかかわらず、有権者の生活の向上を重視する。民主主義としては、日本と異なり、非常に健全な考え方だ。

 ホワイトハウスは、AHCAの復活を諦めていないと表明。とはいえ、かなりの逆風となる。AHCAを主導した同党のトップ、ポール・ライアン下院議長や幹部も、面目丸つぶれだ。上下院で、与党が過半数の議席を占めるにもかかわらず、最優先だった政策でさえ可決することができないのだ。

 大統領の公約であっても、内容が不十分な政策には、議会与党がストップをかける。これがチェック・アンド・バランスの表れだ。

大統領令に対し
司法が違憲判断

 三権分立の一翼を担う「司法」も、同様にホワイトハウスに目を光らせている。

 世界中の空港で混乱を引き起こした、イスラム圏諸国からの旅行者の入国を禁止した1月下旬の大統領令についてだ。これは、西部ワシントン州の連邦地裁が差し止めを命じる仮処分を出した。同処分を高裁もすぐに支持し、大統領令は、無効となった。イスラム圏からの旅行者や移民は、一転して、入国できるようになった。

 トランプ氏は3月下旬、最初の大統領令を改訂したものに署名した。しかし、再度、ハワイの連邦地裁判事が差し止め仮処分を命じ、反故にされた。遠いハワイで仮処分命令を書いた判事は、「何者なんだ?」と全国に名を知られることになった。

 大統領令が無効になったのは、イスラム教国の旅行者や移民を、宗教への信仰によって差別するのは、米合衆国憲法に違憲というのが理由だ。

 さらに、米連邦捜査局(FBI)と、上下院情報特別委員会は、トランプ氏の選挙参謀とロシア政府が、昨年の大統領選挙で共謀し、選挙結果を操作したかどうかについて捜査あるいは調査している。トランプ氏が指示、あるいは関係していたのであれば、大統領が「犯罪人」になる可能性があるという異常事態だ。

 ニクソン元大統領のウォーターゲート事件にちなんだ「ロシアゲート」疑惑は、すでに、トランプ大統領の支持率を就任以来最悪の36%にまで引き下げている。

 「三権分立」と「疑惑の調査」という二つの大きな壁が、トランプ氏のホワイトハウスに立ちはだかっている。

「犯罪人」と書かれた反トランプ派のプラカード。ニューヨーク市内にて

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

チェック・アンド・バランス

権力が単一の機関に集中しないための仕組みとして、権力を区別、分離し、相互間の抑制、均衡(チェック・アンド・バランス)を図ること。  チェック・アンド・バランスが機能した例として、トランプ氏による入国禁止に関する大統領令は、2回にわたり裁判所に無期限執行停止とされている(司法省は上訴、第9巡回区控訴裁判所が審理を開始する)。また、現在米議会は共和党が両院で過半数を取っているが、トランプ氏が採決を求めた医療保険代替案は採決の前に挫折している。

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