2017/03/17発行 ジャピオン907号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第47回 ニュースをどう読むか

事実見つける方法は?
フェイク見破る能力を

 「ニュース」という言葉は、イコール、実際に起きたこと、事実だと思っていた。それなのに、「フェイク・ニュース」という言葉が生まれた。友人が、先日こう聞いてきた。

 「トランプの大統領就任式の参加者が、オバマより少なかったって本当なの?」
 「CNNが検証していたけど、ワシントンの地下鉄の乗客数も、激減だったのよ。私が乗った地下鉄もガラガラだった」「でも、CNNもフェイク・ニュースを流すんでしょう」

 彼女は、コロンビア大卒で、若いエンジニアだ。にもかかわらず、かなり混乱しているようだ。それは、トランプ氏が、自分を批判する記事を書く主要メディアを、毎日のように記者会見かツイッターで「フェイク・ニュース」を書いた、と言うからだ。

 しかし、「混乱してはならない」とはっきり言いたい。CNN、ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、ポリティコ、AP通信、ロイター通信といった伝統的な報道機関が、フェイク・ニュースを流すことは、ほぼ100%ない。理由を示そう。

報道支える機能
校閲と倫理綱領

 第1に、一つのニュースが発信されるまでに、報道機関では複数の人が目を通し、「校閲」という事実確認作業が複数回ある。

 第2に、これらの報道機関は、「ソサエティ・オブ・プロフェッショナル・ジャーナリスツ(SPJ)」(1909年設立)による「倫理綱領」を社として支持している。これらの社は、同綱領に反し、剽窃(ひょうせつ)、でっち上げ、誇張をした記者や編集者を「解雇」する。解雇した例もある。

 第3に、万が一、事実に反する、間違った情報が記事にあった場合、これらの報道機関は、直ちに訂正をする。記事全体が間違っていた場合、内部調査をし、訂正記事を流す。

 これらを一つもしていないのが、フェイク・ニュースを流す情報源である。過去には、「バチカンのフランシスコ法王が、トランプ氏を支持した」「ビルとヒラリー・クリントン夫妻は、小児性愛者のパーティーに参加した」といった例がある。これらは、オルト右翼系の「ブライトバート」「インフォウォーズ」といったサイトに流れ、未だに訂正記事すらない。

 一方、「主要メディアは、大統領選挙の予想が外れたじゃないか」という人がいる。然り。しかし、外れた予想は、「フェイク」ではない。過去にあった世論調査や出口調査に基づいて、「ヒラリー・クリントンの勝率は、8割だ」と、確率を示していたもので、「勝つ」というデマを流したわけではない。

 もちろん、こうした確率にたどり着いた主要メディアに反省点は大いにある。取材は、ほとんど大都市部と候補者周辺で行われ、トランプ氏を勝たせたウィスコンシン州やミシガン州の労働者階級の声や希求を、長年にわたって取材してこなかった。

フェイクか否かは
検索で判別できる

 それでも、ワシントンで起きていること、世界で起きている事実を知るには、主要な報道機関を追い掛けるに限る。私は、朝から、ニューヨークタイムズとガーディアンを読み、iPhoneの「News」から、CNN、ワシントンポスト、FOXの記事を拾う。そこには、オピニオンもあるが、事実に基づいた意見であって、それに賛成するかどうかの考え方は、個人の問題であり、報道機関に頼ることはできない。その能力は、日々、個人個人が鍛えるものだ。

 主要な報道機関以外で、気になる情報を見て、フェイク・ニュースかどうかを調べる方法があるので、お勧めしたい。「ローマ法王 トランプ氏 支持」といったキーワードを入れて、APやロイターなど通信社の記事がヒットしなければ、間違いなくニュースではない。これこそが、情報源と広告主が、クリック(=お金)を求めて、でっち上げたフェイク・ニュースだ。その場合は、面白半分に、ソーシャルメディアでシェアをするべきではない。

 では、なぜトランプ氏は、報道機関の事実であるニュースを「フェイク・ニュース」と言い続けるのか。それは、おそらく、外から与えられる情報ではなく、自分しか信用していないからだろう。

「バチカンのフランシスコ法王がトランプ氏を支持した」という情報が流れた場合、グーグル検索で、キーワードを入れた検索結果にAP、ロイターなどの通信社の記事がヒットしない場合は、事実ではない可能性が高い

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

校閲(こうえつ)

原稿の誤字脱字、言葉の使い方の間違いを正すことから、原稿に書かれていることの事実や掲載するデータの事実確認を行う作業。報道機関では校閲を担当とする専門職があり、独立した部署を置いていることが多い。伝統的な報道機関の場合、ニュースを掲載・発信する前に、基本的には複数回の校閲作業を経ている。  また「校閲」と混同されやすい「校正」は、基本的には原稿中の文字を中心に見て誤字脱字を正すことを意味している。色校正は印刷物を発行する前に、最終的に色味を確認すること。

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