2017/03/03発行 ジャピオン905号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第46回 新政権のメディアとの対立

10メディア締め出し
対抗策は市民の支援

 週替わり、いや、日替わりとさえ言えるトランプ大統領の政権のすったもんだが続く「トランプ劇場」だが、その異常さが増している。以前から懸念されていた米メディアとの対立姿勢が、加速している。

 大統領報道官のショーン・スパイサー氏は、定例記者会見を非公式な形に変更し、CNNやニューヨーク・タイムズ紙など少なくとも10報道機関の参加を拒否した。報道官は毎日、午後一番に定例記者会見を開き、テレビで生中継される。

 スパイサー氏は、これをブリーフィング、つまり、撮影なしで、質疑応答にする形に変更した。それだけでも、過去になかったことだ。参加が拒否された報道機関は以下の通り。

▽ニューヨーク・タイムズ
▽ロサンゼルス・タイムズ
▽ニューヨーク・デーリー・ニューズ
▽英デーリー・メール
▽CNN
▽英BBC
▽ポリティコ
▽ザ・ヒル、バズフィード
▽ハフィントン・ポスト

保守系メディアは
会見への参加容認

 トランプ大統領が、安倍晋三首相と日米首脳共同会見を開いた際、質問が許された保守系ニューヨーク・ポストやFOXテレビは同日、ブリーフィングへの参加を許された。さらに、上級戦略官のスティーブン・バノン氏が会長だったオルト右翼系サイト「ブライトバート・ニュース」なども参加していた。

 ニューヨーク・タイムズ同様、伝統的なメディアのAP通信とタイム誌は参加を認められたもののボイコットし、ホワイトハウス記者会は猛烈な抗議声明を発表した。

 実は、CNNとニューヨーク・タイムズはこれに先立ち、トランプ大統領が激怒するニュースを流していた。トランプ選挙陣営幹部が、昨年の大統領選中、ロシアの情報当局者らと連絡を取っていたという内容だ。これは、ロシアが、トランプ氏が有利になるように選挙をハッキングした可能性があるという、以前から浮上しているスキャンダルを裏付けするきっかけになるかもしれない。

 CNNは、「(トランプ政権が)気に入らない記事への報復だ」と反発した。また、ニューヨーク・タイムズは「さまざまな党の政権を長く取材してきたわれわれの歴史で、かつて起きたことがない」とする声明で、政権を非難した。

「暴走」で危うくなる
権力のチェック機能

 なぜ、このようなことが起きているのか。ニューヨーク・タイムズの名コラムニスト、ニコラス・クリストフ氏は、「メディアをトランプ大統領が攻撃しているのは、彼にきまり悪い思いをさせるだけではない。今や、メディアは、彼の権力を組織的にチェックできる最も重要な機関だからだ」と指摘する。

 トランプ大統領が、嘘や間違いをツイートする一方で、政権を支持するようなフェイク・ニュースがまかり通る。実は、それをトランプ支持者のほとんどが、信じ、ありがたがっている。

 また、トランプ政権の側近やチームは、トランプ氏の「暴走」を防ごうとも、あるいは阻止しようともせず、むしろ、それを助長する、あるいは追随する発言や行為を繰り返している。スパイサー報道官が、「ホワイトハウス内の情報を集め、メディアに正確に伝える」という責務を果たさず、トランプ氏の意向を受けて、ブリーフィングに主要メディアの一部を退けたのは、最もいい例だ。

状況に立ち向かうのは
メディア支える市民

 主要メディアは、市民、そして民主主義のために仕事をしているにもかかわらず、ホワイトハウス、つまり民主主義の国アメリカのトップが執務する館で、抑圧されている。ジャーナリストやカメラマンにとっては、まるで、独裁主義や共産主義の国で働いているようなものだ。

 「恐怖政治」のような状況だが、それに立ち向かうメディアを支えられるのは、市民だ。実際に、ブリーフィングに入れなかったCNNの視聴率やウェブサイトへのアクセスは、上昇している。権力をチェックする組織は、メディアだが、それを支える市民の力なくしては、成り立たない。

就任から1カ月を経た各地でトランプ氏の政策を批判するデモが行われている

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

フェイク・ニュース

本来、フェイク・ニュースとは、SNS上などで拡散される真偽が定かではない情報のことを指す。トランプ大統領は、主に自身を批判的に報道しているメディアの報道に対して「フェイク(偽)・ニュース」と呼び非難している。先月16日の記者会見でもメディアの報道に関して強く非難をした他、自身のツイッターでも、報道の真偽を疑い「大手メディアを信じるな」と投稿。24日には保守政治行動会議で、「われわれはフェイク・ニュースと戦っている。情報と情報源を捏造する人たちと戦っている」と述べている。

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