2017/02/17発行 ジャピオン903号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第45回 新政権の外交

ビジネスマン・トランプ
現実路線かディールか

 トランプ新大統領は、2月10日、日本の安倍晋三首相と首脳会談に臨んだ。「びっくりポン」の結果になるかと日本政府は懸念していたが、トランプ氏の機嫌は良く、会談の結果を菅義偉官房長官は、こう評価した。

 「今後の日米関係をさらに発展させる上で、極めて意義のあった会談だ」

 トランプ氏は大統領就任後、テレザ・メイ英首相と会談し、首脳会談は安倍首相とが2度目。しかし、日米共同声明は、トランプ政権として初の2国間文書で、菅長官は「日本重視の表れ」という。

選挙中の発言を修正
伝統的外交路線に?

 「極めて意義のある」とまで言う会談の内容をまとめてみる。日本側が確認をしたかった日米同盟の重要性、そして経済協力の強化という点は、難なく再確認。さらに、安全保障問題は、「満額」(毎日新聞)という成果を得た。沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)の防衛を確認。さらに、北朝鮮のミサイル発射を受けた合同記者会見で、トランプ氏はこう言った。

 「米国は、偉大な同盟国である日本と100%共にある」

 これには、驚いた。トランプ氏は選挙集会で何度も、こう言っていた。

 「日本が攻撃されたら、米国が助けに行くが、米国が攻撃されても、日本は助けに来なくてもいい。非常に公平ではない」

 今回の首脳会談から、トランプ氏は、選挙戦中のこうした過激な発言を修正し、あるいは覆し、米国の過去の政権が築いてきた伝統的な「現実路線」を尊重したことが分かる。この後、カナダ、イスラエルとの首脳会談もあり、日本に続いて、トランプ氏の外交路線を確認していく「試金石」となりそうだ。

話よく聞く態度には
教育のしがいあり?

 もう一つ、日米首脳会談から学んだことがある。トランプ氏は「教育のしがいがある」ということだ。会談の内容をブリーフィングされた関係者によると、トランプ氏は安倍首相の話をよく聞き、会談は首相のリードで進んだという。大統領就任前にニューヨークで安倍首相と会った際も、同様だった。つまり、粘り強く説明すれば、多少は理解を示す傾向が見て取れたということだ。

 日本政府関係者が胸をなでおろしたように、首脳会談は「平和裡」に終わったと言える。

 しかし、だ。筆者は、決してトランプ氏がそれだけで終わるとは思っていない。彼は、政治家だったことはなく、70歳の今まで、そして実は今も「ディール(取引)の男」だ。一部で「満額」回答を与えて、他方で「満額」回答を求めてくるかもしれない。可能性はゼロではなく、攻めに来る分野は、通商問題や日本の金融政策などが考えられるだろう。

 また、就任から23日間で320本以上に及ぶ「ツイート」は、今後も個別の政策や企業、個人を攻撃するツールとして使い続けるだろう。すでにトヨタ自動車など自動車メーカーが、攻撃される対象になってしまったが、その場合は、ツイートを使って、安倍首相を見習い、丁寧に事実関係を説明して、反論するべきだろう。

娘のブランドを宣伝
本質は「とんでも的」

 外交路線が現実化しているというだけで、トランプ氏の「とんでも」政権を見直してもいいという訳ではない。トランプ氏は、娘のイヴァンカさんのブランドの販売契約が、米百貨店ノードストロムに打ち切られた際、娘をかばうツイートを発した。さらに、大統領上級顧問のケリーアン・コンウェイは、FOXニュースに出演した際、イヴァンカブランドを宣伝した。

 「イヴァンカ・トランプの商品を買いに行きましょう。私は今日、ここで無料のテレビコマーシャルをするつもりです。皆さん、今日買いに行きましょう。オンラインでも買えます」

 超大国のトップが、身内のビジネスを支援し、側近が国民の財産である電波を使って追随する。利益相反も甚だしい。つまり、トランプ政権は、「びっくりポン」「とんでも的」なところが、本質としてあることは、想定していなければならない。

中国でも日米首脳会談についてはメディアで報道されている

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

日米首脳会談

安倍首相は10日、ホワイトハウスでトランプ大統領と会談し、日米同盟と経済関係を強化していく方針を確認し合い、共同声明を発表した。声明では、両国の同盟関係が、「アジア太平洋地域における平和、繁栄及び自由の礎である」とし、「協力を更に強化する」としている他、経済においても、「両国の継続的努力の重要性を再確認した」としている。両氏は翌11日にはフロリダ州でゴルフを一緒にプレーし、移動中に今後の日米の連携について話したとされる。菅義偉官房長官は会談を評価し、「揺るぎない日米間の絆をさらに強化したい」と語った。

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