2016/07/01発行 ジャピオン871号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第30回 6月23日という一日

銃規制から離脱まで
歴史に残る波乱の日

 2016年6月23日は、忘れられない日になりそうだ。英国が、EUに残留するか離脱するかの国民投票を行い、離脱という道を選んだだけではない。朝から、米国内も混沌としていた。何かが崩れていく感じが、朝から世界中で充満した。

 朝、目を覚ますと、ワシントンの下院議場で、民主党議員が、銃の規制強化関連の法案に対する投票を求めて、夜通し床に座り込みを続けていた。それは25時間以上に及び、ポール・ライアン下院議長が、(議会運営のための)小槌を打ち鳴らしても、従わない不服従運動を展開する異例の事態となった。

銃規制の訴え

 公民権運動家として有名なジョン・ルイス議員(ジョージア州民主)は、「あまりにも多くの子供たちや兄弟姉妹、両親、友人、いとこたちが銃のために死亡している。今こそ行動すべき時だ。これ以上黙ってはいられない」と、皺だらけの強面の顔をさらに厳しくして訴えた。

 ライアン議長は、議事進行を断念し、共和党議員は議場を離れた。この時点で、唯一、撮影・放送を許されているCーSPANが打ち切られたが、民主党議員は、ソーシャルメディアを使って、中の映像を流し続けた。連邦議会のルールに反した行為だが、そんなものは、議員の怒りの前に吹き飛んでいた。公式に認められているC—SPANでさえ、規則を破り、ゲリラ的に映像を流した。

 座り込みが、史上最悪の49人が犠牲となったフロリダ州オーランドの銃乱射事件を受けて、行われたのは言うまでもない。ところが、上院が20日に行った採決で、複数の銃規制強化法案が否決されている。

 議会は、 7月4日の独立記念日まで1週間、休会する。民主党議員は、休会前に銃規制強化法案の可決を迫り、「ウィ・シャル・オーバーカム」の歌詞を変えて、「ウィ・シャル・パス・ザ・ビル!」と唱和した。しかし、ライアン議長は、審議の時間も取らないまま、全く関係のない法案の採決を行い、休会に持ち込んだ。

移民改革が頓挫

 座り込みを見守っていると、次のニュースが飛び込んできた。米連邦最高裁は、オバマ大統領が議会と対立したため、大統領権限に基づき推進しようとした移民制度改革(DAPA)を認めない判断を示した。改革は、子供に米国籍、あるいは合法的な滞在資格がある場合、不法移民の強制送還を免除するものだ。

 最高裁は、オバマ氏が指名した判事を共和党が多数派の上院が承認しなかったため、審理を一人欠いた判事8人で行っている。この日、オバマ氏のDAPAについては、賛成4、反対4と意見が割れた。このため、DAPAを無効とした下級審の判断が維持されることになり、事実上、改革は頓挫に追い込まれた。

 首都ワシントンで、連邦議会も機能しなければ、最高裁も機能しないという、異例が同じ日に重なったことになる。

 オバマ大統領はホワイトハウスの記者会見で、上院を糾弾した。
 
 「上院は、私が最高裁判事に指名したメリック・ガーランド氏を承認しなかった。これは、共和党の怠慢が招いた結果だ」

英国がEU離脱か

 そして、夜中ちかく、英国民が、EUからの離脱を支持する派が勝利をおさめた速報が入った。「統合」という言葉に大きな希望と期待を寄せて誕生したEUに、亀裂が生じ、衝撃を与えている。追随する国が出てくることも予想される。また、将来の不透明感が増し、多くの国の経済や金融に大きな影響を、長期間にわたって与えるだろう。

 三つの「衝撃波」を受けた6月23日は、おそらく歴史に刻まれるだろう。「波乱の木曜日」とでも言おうか。

 共和党の顔、ライアン議長は、座り込みに対して、こう抗議した。

 「民主主義にとっても、馬鹿げた行為をした人々にとっても、誇れる瞬間ではない」

 下院民主党議員の行為は、あっぱれにも見えるが、いろいろなことが、「なりふり構わず」行われている感は否めない。果たしてこれは、ある大統領候補、トランプ氏の影響だろうか、とも。

マーク・タカノ議員がフェイスブックに流した、座り込みに参加した議員の映像

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

下院議員座り込み

22日、ジョン・ルイス連邦下院議員を筆頭とする民主党議員らが銃規制強化法案の採決を要求し、抗議の座り込みを行った。座り込みに参加したのは、連邦下院議員下院民主党の議員188人のうち168人、上院民主党の44人のうち34人。民主党のナンシー・ペロシ院内総務も記者団に対し、民主党は法案が成立するまで座り込みを続けると宣言。銃規制派は、政府のテロ監視リストの人物への銃販売禁止と身元確認強化を訴えた。座り込みは25時間以上続いた。

バックナンバー

NYジャピオン 1分動画


ただいま配布中発行

巻頭特集
「ニューヨークの家賃は学区で決まる」。そうささ...

   
Back Issue 9/14/2018~
Back Issue ~9/7/2018
利用規約に同意します
おすすめの今週末のイベント