2016/01/22発行 ジャピオン848号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第19回 コンシューマー・エレクトロニクス・ショー

「家電」の意味が激変
モノのインターネット

 ネバダ州ラスベガスの巨大なシアター。約5000人の聴衆が見守る中、広い舞台を黒い無人飛行機ドローンがブンブンと飛び回っている。途端、舞台にあった大きな木の模型がぱたっと横倒しになった。その手前で、ピタッと空中で止まるドローン。聴衆が「オーッ」と驚きの声を発して、拍手を送った。

 誰かがリモコンで操縦しているのではない。ドローンの中に、センサー付きカメラが搭載されていて、障害物を感知し、止まったのだ。ビデオの映像を見ているのではない。実際のデモで、ラスベガスという場所のせいか、手品でも見ているかのようで、聴衆が驚いた。

 毎年1月に開かれる米最大の家電市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」(CES)で行われた半導体大手インテルの基調講演でのことだ。

インテルが着目した
ドローンの衝突懸念

 撮影用などに急速に普及しているドローンだが、最大の難点は、衝突の懸念がまったく解消されていないこと。昨年は、旅客機とのニアミスの報告も急増した。まだ大事故は起きていないものの、産業界は衝突を避けることができるドローンを待望している。そこに目を付けたのが、インテルだ。

 これがインターネットとつながると、配送経路や撮影を自由に指示できるようになる。例えば、マウンテンバイクに乗っている人が、ドローンに自分の後を追い掛けさせて、スピード感あふれるビデオを撮影するというようなこともできる。

さまざまなモノが
ネットにつながる

 ドローンだけではない。いろいろなモノがインターネットとつながって、より生活やビジネスが楽になる方法が、ショーの各所で紹介された。キーワードは、「インターネット・オブ・シングス(IoT)」、日本語では「モノのインターネット」だ。

 例えば、電動歯ブラシにセンサーが入っていて、歯磨きがきちんとされているか、スマホにデータを送ってくれる。磨き残しや、磨き過ぎているところなどを、スマホの画面で知ることで虫歯予防につながる。フランスの会社コリブリーの創業者らが、わが子の磨き残しを心配して発明した。

 また別のフランスの会社ハイドラオは、スマート・シャワーヘッドを紹介した。センサーのついたシャワーヘッドに、一回に使う量をスマホやタブレット端末から入力すると、水の節約ができる。ヘッドにランプが入っていて、色が変わることで、水量が終わりに近いことも教えてくれる。

 インテルのブースで紹介されていたのは、自家用車と家の中のモノがつながった仕組みだ。鍵や財布、スマホ、会社の資料に半導体を入れると、家を出る際、忘れ物がないか、車がチェックしてくれる。何か忘れていれば、家の中でそれがある場所を、出発前に知らせる。

 「われわれは、消費者が製品そのものよりも、(製品から得られる)体験を求める、新たなテクノロジーの時代に突入した」

 インテルのブライアン・クルザニッチ最高経営責任者(CEO)は、こう宣言した。


今後の焦点は
個人情報の問題

 確かに、以前は家電市というと、テレビの大型化やスリム化、ラップトップ・パソコンの軽量化などが競われていた。しかし、これからは、インターネットとつながることで、家電に何ができるのかということが、消費者にとって楽しみな部分だ。テレビ画面がずらりと並んだ風景が当たり前だった家電市も、様変わりしつつある。

 もちろん、IoTはコンセプト段階だが、ヘルス分野などでは利用も始まっている。スマートウオッチやスマホのアプリに、毎日の運動量、健康データなどを記録して、ダイエットや健康管理に生かす、というのは、いまや誰にでもできることだ。

 もちろん、個人情報が空中を飛び交う世界になるため、連邦議会ではIoTが普及した際、プライバシーをどう守るかという議論が始まっている。日本はどうだろうか。

半導体の設計開発会社、クアルコムのスティーブ・モレンコフCEOも、IoT戦略を発表した

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

コンシューマー・エレクトロニクス・ショー

Consumer Electronics Show。通称CES(セス)。全米民生技術協会(CTA)が主催する、家電・情報・通信・エレクトロニクスに関する総合展示会。1967年6月にニューヨークで初めて開催され、95年から毎年1月にネバダ州ラスベガスで開催されるようになった。ことしは1月6日から9日まで開催され、初日には、インターネット動画配信大手ネットフリックスのリード・ヘイスティングス最高経営責任者(CEO)が、基調講演を行った。また2015年には初となる「CESAsia」がシンガポールで開催され、ことしは同地で5月11日から13日まで開催される予定。

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