2015/10/09発行 ジャピオン834号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第12回 ローマ法王来訪から国連総会

ダンプカーが道ふさぐ
変わるNYの警備

フランシスコ・ローマ法王が9月24日、5アベニューにある聖パトリック大聖堂で礼拝を行っていることは知っていた。どうやってそこを迂回(うかい)して、タイムズスクエアからイーストサイドに移動するか、6アベニューまで来て驚いた。

市清掃局の白いダンプカーが、大聖堂に近いストリートをふさいでいたからだ。警官が数人ずつその前に立ち、右往左往する観光客や通勤客に「この通りはブロックしているんだ。迂回しろ」と指示していた。

ニューヨーク市警が、要人警備で通りを封鎖するのは、昔ながらの青い木製フェンスか、鉄の格子状フェンスと相場が決まっている。しかし、190カ国から来る各国首脳に加えて、ローマ法王の訪問となれば、使えるものは何でも使おうということだろう。清掃局のダンプカーを見たのは初めてだ。  帰宅して、MSNBCの人気ニュース番組「ザ・レイチェル・マドウ・ショー」を見ると、レイチェルがこう言っていた。

「今、ワシントンから帰って来たけど、これまでに見たこともないものを見ちゃいました。ローマ法王の警備のために『雪かき車』を使っていたのです。と、思っていたら、ニューヨークは清掃局のダンプカーを使っていました」

オバマ大統領が
ホテルを変えた理由

変化は、白いダンプカーだけではなかった。

ローマ法王がニューヨークからフィラデルフィアに移動した途端、日本の安倍晋三首相をはじめ、中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領、そしてオバマ米大統領と、大国の首脳も次々にニューヨークに到着した。  「また、9月がやってきました。国連本部で総会が開かれるため、道路が封鎖されます。出掛ける際は、交通情報に注意しましょう。東側には行かないようにしましょう」  朝から、「NY1」のニュースが市民に注意を促している。

オバマ大統領が常に泊まっていたウォルドルフ・アストリアに行ってみた。過去数十年、米大統領はニューヨークに来ればここに宿泊していたし、米国の国連代表部も賃貸していた。しかし、念のために調べてみると、ことしは、オバマ大統領はウォルドルフに泊まらなかった。

理由は、中国の保険会社がことし2月、ウォルドルフを買収したためとみられる。米中の間では、米国の企業や政府機関のコンピューターシステムから個人情報などを「ハッキング」していることが問題化している。習国家主席が国連総会に先立ち、ワシントンでオバマ大統領と首脳会談に臨んだ際、「盗聴問題」は、焦点の一つだった。ホワイトハウスは、オバマ大統領が、「懸念(concern)」を超えて、「憤り(anger)」という言葉を使って、国家主席に抗議するとまで伝えていた。

ホワイトハウスは、ウォルドルフから宿をニューヨーク・パレスに移したことについて、理由は明らかにしていない。しかし、米メディアは、盗聴問題が懸念対象となり、ウォルドルフとの関係を絶ったとしている。ちなみに、習国家主席は、ウォルドルフに宿泊した。

金属探知機で
カメラまでチェック

とにかく、ウォルドルフとニューヨーク・パレスに向かうと、両ホテルともに、入り口に金属探知機を用意していた。カメラを首に下げたままにしていると、探知機に入れるように注意された。

「一番怖いからね」と、ガードマン。カメラを改造して、武器にする可能性もあるからだという。

安倍首相やオバマ大統領がニューヨークを去ってから、無人飛行体ドローンへの警戒も新たに加わっていたことを知った。過去には、ドイツのメルケル首相が、屋外で遊説中、2メートルの至近距離までドローンが近づいたことがあった。市民が企画したプロジェクトだと分かったが、武器を積んでいれば大問題だ。

国連総会は、市民にとって交通渋滞を思い浮かべる9月の年中行事だが、「危機」をもたらすテクノロジーの姿が変わり、警備の方法も変化してきている。

ミッドタウンに登場した清掃局のダンプカー。ローマ法王が聖パトリック大聖堂で礼拝中のため、通りをブロックしている

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

ローマ法王のNY訪問

9月22日から27日まで、ローマ法王フランシスコが米国東海岸を来訪。ニューヨークには24日から26日まで滞在した。25日には、ローマ法王として初めて国連総会で演説し、難民問題と環境保護における改革を、世界の指導者たちに訴えた。その後、9.11記念博物館を訪れ、犠牲者への追悼の意を表明。同日午後にはハーレムの学校アワーレディ・クイーンオブエンジェルズを訪問し、キング牧師の言葉を引用して、教育の機会均等を訴えた。26日午後にはセントラルパークでパレードを行い、法王の姿を一目見ようと集まった約8万人の歓声に笑顔で答えた。同日夜にはマディソン・スクエア・ガーデンでミサを主宰。1万8000人の聴衆から拍手喝采を受けた。

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