2017/01/27発行 ジャピオン900号掲載記事

一からひも解く金融市場

第7回 バーゲンハント

最良の機を待つ投資

 前回は「逆張り投資」について解説しましたが、今回はバーゲンハントについて、お話します。

ポートフォリオ
構築の手順

 投資を行う上で、投資家はポートフォリオ、つまり資産の組み合わせについて考えます。ポートフォリオについては、これが正解というものはなく、自身の年収や、年齢、資産や資金計画などによって、それぞれ異なるものです。

 つまり、どれくらいの資金を投資して、何年後までにどのくらいのリターンを目指すのか、またとれるリスクは何なのかなどを精査し、投資を行うことが重要となってきます。具体的な投資先選定については、まず投資先の範囲を絞ります。投資対象といっても株式、債券、投資信託、不動産、実物資産などがあり、例えば株式の中にも大型株・小型株、国内株・外国株、先進国株・新興国株と、多種多様です。その後に、その中から実際に投資する対象を選別する作業に入ります。その対象を選別する、手法の一つに、割安感が高いものに投資すること、つまりはバーゲンハントという手法があります。

 割安なものというは、どういうものなのでしょうか?ここでは、割安な投資資産がどのように生まれるのかを説明します。割安になっている資産は、割高になっている資産とは異なり、市場からネガティブに捉えられていることが多いです。例えば、その企業の見通しに不確実性があるとか、借金が大きい、また大きな損失を出している、などです。バーゲンになっている場合、時にその資産の本質的価値以上に割安になっている可能性があります。これは、市場がその資産に対して、正確に理解していない状況で生じます。

投資行動の一つ
機を待つことも重要

 ただ、いつもバーゲンがある訳ではありません。よって、機を待つことも重要です。「買うべし、売るべし、休むべし」という相場格言が示す通り、休むこと、つまり機を待つことも重要な投資行動の一つです。以前、投資環境は振り子のように悲観から楽観へ、楽観から悲観へと揺れ動くとお伝えしました。このようなサイクルの中において、投資家は投資するのに最もふさわしい極端な状況、つまりは過度に悲観な状況、または過度に楽観な状況に、常にいる訳ではないのです。投資家は、揺れ動く投資環境を受け入れて、その中で投資するしかありません。投資を成功させるには、市場の状態を把握し、それに応じて、どう動くか決めることが重要です。

 機を待つことの重要性について、投資の神様といわれるウォーレンバフェットは、投資を野球と比較して説明しています。バフェットは、投資家は打率が飛び抜けて高い野球選手より遥かに有利だと言っています。その理由として、投資家の場合、バッターと違って見逃し三振になることはなく、絶好のチャンスが訪れるまで、投資機会を何度でも見送ることができるから、としています。

 投資における良い点の一つは、損を出した場合にしか、不利益を被ることはない点です。損をする投資を見送った場合は、もちろん不利益を被ることはなく、むしろ得をしたことになります。また得をする投資を見送った場合は、他人の資金を運用して収入を得ているプロの投資家は別ですが、一般の投資家にとっては心理的に損した気持ちになるくらいです。

最高の投資機会は
保有者の投売り時

 ではどのような時が最高の投資機会になるのでしょうか?それは資産の保有者が投売りを行うときに訪れます。資産を売ろうとする人は、通常「少しでも高い価格で」、「少しでも早く」という二つの基準の中で、売るかどうかを決定します。しかし投売りを行う場合は、この限りではありません。つまり、いくらでもいいから早く売らなければならないわけです。いくらでもよい、という状況は買う立場からすれば、極めて魅力的な状況です。

 そんな状況なんて発生するの?と、思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、実際に2008年のリマーンショックの際に発生しています。当時、借り入れを行い、投資資金を増やして、運用していた投資家が多くいました。うまくいっているときは、借金をして投資資金が増えている分、大きく収益を上げることができました。しかし危機発生時、借金をして投資を行っていた投資家には、すべてが悪い方向へと逆回転が始まります。つまり下落した為、借り入れを返さなければならず、売らざるえない投資家が増え、その投資家の売りによって更に下落し、更に売らなければならない投資家が増えるといった逆回転(デ・レバレッジ)が発生しました。多くの資産が極端に割安、つまりはバーゲンとなり、この状況下で投資を行った投資家は多くの財を築くことができました。

 妥当な価格がついている資産には、付随するリスクに見合ったリターンしかありません。また割高な資産への投資はハイリスク・ローリターンといえるでしょう。

 重要なことは何を買うかではなく、いくらで買うか、つまりはどれだけ割安で買えるかということです。また、ある種皮肉ではありますが、自分でこれが買いたい!と決めたものに投資するよりも、売り手が積極的に売ろうとしているものの中から投資先を選んだほうが、高いリターンを得られる傾向にあるとの調査結果もあります。

 前回お伝えした逆張り投資、そしてバーゲンハントを狙うことによって、何らかの危機時には、驚異的な利益を上げることができるといえるでしょう。

(参考=HowardMarks “TheMostImportant Thing”, Columbia Business School Publishing)

前田秀人

前田秀人

野村ホールディングス傘下のノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルのニューヨークオフィスで、米国株式セールスとして勤務。テレビ東京「モーニング・サテライト」、東京MX「ストックボイス」などに出演。鹿児島県出身。早稲田大学商学部卒業。父は板前。

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