2019/02/08発行 ジャピオン1005号掲載記事

日本企業のボディーガードに 事務所立ち上げ一意専心

西村あさひ法律事務所 ニューヨーク事務所 執行パートナー 山口勝之

連日の激務の疲れを感じさせない朗らかで柔らかな物腰。昨年10月米国の拠点を設けた西村あさひ法律事務所ニューヨーク事務所代表、山口勝之弁護士(52)は日本企業の米国進出に際し、契約条件で不利にならぬよう「ボディーガードになりたい」と強調する。顧客本位を徹底し、寸暇を惜しんで企業法務を支えていく。

山口さんは留学していた1997年以来のニューヨーク生活。当時と比べ、日本の状況は様変わりし、生産者人口の減少と市場縮小を背景に「企業が生き残るには海外に出ていくしかない」と見る。製造業を中心に進出が相次いだ東南アジアは、急成長から安定成長に移ったと分析。「企業が巨大市場の米国を目指す動きが活発化していると肌で感じる」とし、事務所新設の経緯を説明した。

新事務所の役割は大きく三つ、企業買収など進出支援を含む「コーポレイト」と、訴訟や不祥事対応の「紛争・危機管理」、そして「中南米」を柱とする。米国は1案件の金額が大きい分、契約条件の精査が一層求められるが、「残念ながら日系企業が一方的に不利な条件を強いられているケースが散見される」と憂う。新事務所はそうした不利益を排除すべく、きめ細やかなサービスを提供する。例えば契約案のチェックでは、他の米大手がコメントを10返すところ、100返すといった具合だ。「日本人的意識」で細大漏らさずチェックし、未然に損失の芽を摘む。

他に、米系事務所への報酬も節減できるはずだと指摘。多くの企業が、比較的軽微な法務まで名だたる米大手に委託していることに触れ、「クオリティーが高い半面、フィーも高い」といい、「西村あさひは案件ごとに最適な事務所を選んで組み、フィーを抑えられる」とした。

開設から3カ月余り、「順調なスタートが切れている」と手応えを示す山口さん。一方で日本にいる得意先とのやり取りのため、日米を行き来する生活が続く。就寝中にメールが100通以上届き、起き抜けに返信するところから1日が始まる。日系企業の役に立ちたいと志は高く、仕事は決していとわない。こうした真摯な姿勢は弁護士になった当初から一貫する。余暇が少ない中、飲み会も中座して仕事に戻ることがたびたびあったと振り返る。「限られた時間で精一杯遊びも頑張る」ことを学んだ。

今は余暇を捻出しては留学時になかったハイラインや米同時多発テロの追悼施設を訪れ、時の流れを感じている。オペラ鑑賞も趣味の一つ。落ち着いたら大学で始めたヨットに興じ、大西洋で帆を上げると目を輝かす。

何より今は業務に専念する。「『困ったら、悩んだら、気軽に相談できる』。そんな事務所になりたい。結局月並みな言い方になっちゃいますけど」と笑う。日本最大手の事務所が当地に構えていることは相当心強い。

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山口勝之(やまぐち・かつゆき)■大阪府豊中市で生まれ、パリで育った。東京大学法学部卒業後、1991年に第一東京弁護士会登録、西村総合法律事務所(現西村あさひ法律事務所)。97年コロンビア大学ロースクール卒業、98年米国ニューヨーク州弁護士登録。東証上場企業の社外役員を多数兼務し、経営判断にも関与する立場から、実践的で明快なアドバイスに定評がある

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