正面から正々堂々と勝負

アウルホールディングス 社長 谷 隆志
生粋の道産子(どさんこ)で、スノーモービルで雪山を駆け巡る趣味も持つ。スマートフォンでその動画を見せる表情は、少年のような純真さをのぞかせる。

不動産デベロッパーのアウルホールディングス(HD)の谷隆志社長(49)は年明けにもニューヨークでホテル事業を始める考えだ。無人運営方式を確立し、将来10棟の経営を目指す。自信と意欲に満ち、「正面から正々堂々と勝負する」と、精力的に客先を回る。

現在、東京、札幌、そしてハワイを拠点に飛び回る。海外旅行で多くの国を訪れたが、ニューヨークは「人種の多様さ、観光客の多さ、インバウンドビジネスの象徴のよう。こんなに衝撃的な街はない」と感銘を受けた。

初めて来たのは18年6月。マンハッタンの公園で「ぽかぽかの陽気で古里の匂いがした」と懐かしさが胸に迫った。気候は故郷の北海道と似ていて、すぐに気に入った。

2001年、不動産の販売や管理を手掛けるアウルを札幌市で設立した。当初起業する気はなく、「背中を押されるように始まった」と振り返る。というのも、経営者で天国も地獄も味わった父親の背中を見て育ち、「安定した公務員が最高だと思っていた。今は全く逆ですね」と笑う。

31歳と若いながら経営の才覚があったのだろう。会社は順調に拡大し、最近はインバウンドの需要が盛んな東京・築地で、ホテル事業が進行中だ。

グループ全体の売上高が100億円に迫るも、達成感は「全くない」と飽くなき向上心の谷さん。尊敬するのはソフトバンクグループの孫正義会長で、「生き神様」とあがめる。「世の中の展開を読むのに長けていて自信家だ」と尊敬に加え、密かに対抗意識もたぎらせていた。

現在注力するのは民泊事業。築年数がたったビルを、リノベーションして長く使い続けてもらえるようにする。「使えるものを大事にして、付加価値を加える」のがアウルの事業理念の一つだ。

谷さんは民泊に代表されるシェアリング・エコノミー(共有経済)発祥の地とされる米国へ、4年ほど前から虎視眈々と進出を狙ってきた。来年から駐在員を置き、本格展開する。

目指すのは人が常駐しないホテルの経営だ。勝算はある。徹底した省力化で経費を削り、収支に占める固定費の割合は、一般のホテルに比べて半分以下に抑えられるという。売上高1000億円が目標で、「あと40年は現役でやりますよ」。夢を追って走り続ける。

これからは生活拠点にニューヨークが加わり、年に1、2カ月は滞在することになりそうだ。目が回るような多忙さが想像されるが、「こちらでも楽しみにしてますよ」と趣味のゴルフについては軽妙な語り口。15年ほど続け、健康の秘訣とも。

自身がパワーをチャージする場所はハワイ。訪れるたびに、同じホテルに泊まり、「食べて、ゴルフをして、寝ての繰り返し。ほんとにそれしかやらない。でもそれがリラックスしてエネルギーを蓄える時間になる」。

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谷隆志(たに・りゅうじ)■北海道北見市出身。20代に着物販売会社で営業を担当後、2001年に不動産販売・管理・仲介の有限会社アウル(札幌市)設立、05年に建築デザインのタニ建築設計(現フォレスタ)設立。08年に東京都新宿区に営業所開設、17年にアウルホールディングス設立