2016/05/20発行 ジャピオン865号掲載記事

ボストンぶらり街めぐり

 米国の歴史は、ピルグリムファーザーズが、メイフラワー号に乗り、現在のマサチューセッツ州プリマスにたどりついたところから始まります。古くからの伝統を受け継ぎつつ、新しく変わっていくボストンの街を四季折々の写真と共に紹介するコーナーです。

第83回 マウント・オーバン墓地

 「墓地にお出掛けしませんか?」

 そんなお誘いを受けたことは、ありますか?

 アメリカの郊外には、まるで億万長者宅の庭園に紛れ込んだような気分になる豪華な墓場がたくさんあります。ハーバード大学があることで知られるケンブリッジ市と、その西に隣接するウォータータウン市の境界線にまたがって広がる、マウント・オーバン墓地はその一つです。

 1831年にボストンの人口増加による埋葬地不足を解消するために作られたこの墓地は、自然に取り囲まれた心安らぐ環境づくりに力を入れてきました。「木の美術館」ともいえるアーボレータム(樹木園)の一つで、19世紀後半に日本から取り寄せたカエデやマツを含める5000種類の木が、175エーカーにわたる敷地を覆い、その合間に季節折々の花が咲きほころびます。無数の墓石をつなぐ小道は奇麗に整備され、池や橋まである大庭園です。ここは、ダウンタウンの喧騒(けんそう)を離れてほっと一息つける、都心のオアシスなのです。

 19世紀の墓石が立ち並び、ボストンの歴史が垣間見えるマウント・オーバン墓地ですが、日々新しい墓石も建てられています。壮大なチャペルは火葬設備付き。お墓参りに訪れる人も後を絶ちませんが、墓地は散策を目的にやってくる人々も歓迎してくれます。団体も珍しくなく、門の傍には広大な墓地を迷子にならずに堪能できるようマップや資料などが用意されており、掲示されている出版物料金(1冊50セントから2ドル程度)を、設置してある箱に入れる仕組みになっています。

 これほど資金をかけた庭園にもかかわらず、入園は無料。ボストンで夏を過ごすなら、足を延ばしてみてはいかがでしょうか。1日ではまわりきれない広さなので、セクションごと、またはテーマごとに計画を立ててまわることをお勧めします。

 開園時間などの詳細は、www.mountauburn.orgをご覧ください。(ライターS)

第83回 マウント・オーバン墓地

豪華なステンドクラスと火葬場のあるビグロウ・チャペルは、厳かな佇まい
数えきれないほどの彫刻が、墓地の角々を飾る。歩くだけで歴史をたどる気分になる
南北戦争での北部勝利を記念した彫刻。19世紀の彫刻家マーティン・ミルモア作

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