グローバル時代の子育て

衝動をコントロール できる子に育てる

優秀な子どもが必ず身に付けているものは、「衝動をコントロールする習慣」です。衝動をコントロールするとは、湧き上がる感情の変化に気付き、それを上手にコントロールすることです。自分を律する習慣といってもよいでしょう。

習慣作りは
時間がかかる!

例えば、ダイエット中にケーキを食べる、やることを先送りにする、運動しないといけないのにゴロゴロする、もう一杯くらいいいだろうと飲み過ぎる、少しのことでカッとなり思ってもいないことを口に出す……。

衝動をコントロールする習慣は、大人でも身に付けるのが難しいものです。難しいからこそ、早くから身に付けることは大きなアドバンテージになります。

行動学の研究者である、マーシャル・リンデン氏とマシュー・アクリモント氏が、The Journal of Nervous and Mental Diseaseに発表した2005年の研究によると、衝動性は大きく四つのタイプに分類できます。

・切迫感…何でも今すぐやらないと気が済まない

・計画性の欠如…考えたり計画したりせずに行動する

・忍耐力の欠如…時間がかかるタスクをすぐ諦める

・刺激・快感の追求…刺激や快感が得られることばかりやろうとする

衝動をコントロールする方法は?

今やるべきことに集中できず、他のことに心を奪われてしまうと人生が前に進みません。これを大人になってから改善しようとしても、長い時間と多くの努力が必要になります。子どものうちに身に付けることで、より賢明な選択をしやすくなるのです。

では、何をすればこの習慣が身に付くのでしょうか? これには大きく三つの方法があります。

①衝動の存在を気付かせる

まずは、人には「衝動がある」ということを理解してもらうことです。例えば、泣きわめく子どもに対して頭をなでたり、背中をさすったり、深呼吸をさせて落ち着かせます。そして、子どもに質問をするのです。「今、どんな気持ち?」「どうして悲しいの?」「言葉で説明してみて」と、決して声を荒げることなく、やさしく聞きます。幼い子どもの場合には「怖いの?」「寂しいの?」など、親が言葉を選んであげてもよいでしょう。

自分の感情を子ども自身が口にすることで衝動の存在に気付くことができます。すると、子どもは自分は訳もなく泣いているのでなく衝動という感情があるから泣いているのだと気付くことができます。

②意味を説明する

続いては、衝動をなぜ抑えなければいけないのか、その意味を子どもに理解してもらいます。怒ったり、不安になったり、焦ったり、ふざけたり、そうした衝動が起きることは人間の生理であり、悪いことではありません。いけないのは、その衝動に振り回されてしまうことです。

相手が子どもだからと思わずに、「なぜ衝動をコントロールしなければならないのか」をきちんと言葉で説明してあげてください。例えば、「友だちと遊んでいるときに順番を待てなければどうなるか」「友だちがゲームをシェアしてくれなかったらどんな気持ちになるか」「急に暴れ出したらどう思うか」と質問します。

すると、子どもは「悲しい気持ちになる」「嫌な気持ちになる」と他者の立場から考えることを理解できるのです。

③方法を教える

「一緒に深呼吸しよう! 吸って、吐いて」と声を掛けます。子どもは「スーハースーハー」と深呼吸を繰り返し、呼吸を整えます。このように、「衝動が起こったときにはゆっくりと3回深呼吸してね」など、感情を落ち着かせる方法を教えてあげることが三つ目の方法です。

そして落ち着いたら、考えてから行動するように繰り返し子どもに言い聞かせます。このように対応することで、子どもは衝動をコントロールする術を身に付けていくのですが、何よりもこれらを定着させるには、親自身にも衝動をコントロールする習慣が求められます。子ども相手にイライラしたり、怒鳴りつけたりしてはいけないのです。

 

 

船津徹 (ふなつ・とおる)

TLC for Kids代表 教育コンサルタント

1990年明治大学経営学部卒業。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。
しちだ式教材制作に従事。2001年ハワイ州ホノルルにてグローバル教育を行う学習塾
TLC for Kidsを開設。
2015年に
TLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校開設。2017年上海校開設。
アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上のバイリンガルの子どもの教育に携わる。
イエール大学、ペンシルバニア大学など米国のトップ大学への合格者を多数輩出。
著書に「すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。」(ダイヤモンド社)、「世界で活躍する子の〈英語力〉の育て方」(大和書房)。

 

 

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